こんにちは、カイです。
この記事では西村佳也さんの名作キャッチコピーをご紹介します。
広告コピーのクオリティと社会的評価を高め、TCC賞やカンヌ賞など、受賞した実績は数知れず。
2013年にはその功績を称えられ、「TCC HALL OF FAME(コピーライターの名誉殿堂)」に選出されました。
つねに本質をとらえ、テクニックに頼ることなく品位ある日本語で、読者の心情と知性にふかく届く広告づくりをされてきた西村佳也さん。
そのコピーをジャンルごとにまとめていますので、気になるところからご覧ください。
人生 編
なにも足さない。
なにも引かない。
(サントリー/サントリーピュアモルトウイスキー山崎)
いろんな成分が足され引かれ加工されている現代の飲食料品。
それらと比較しつつ商品特徴である「そのまま」を、こうも深みのある表現に昇華した本質的コピー。
まるで悟りの境地に達するような、人生訓としても響く名作。
超絶しびれます。
CMバージョンはこちら。
水、風、光など自然のイメージがコピーと共鳴して、商品を作り上げているように感じます。
ウイスキーを注ぐ音も、心地いいですね。
透明感と深みがある久石譲さんの演奏も、ブランドにどんぴしゃり。
ハイクオリティなCMだなぁと。
体の中で、鍵がはずれる音がする。
(サントリー/サントリーピュアモルトウイスキー山崎)
時間は、
液体である。
(サントリー/SUNTORY BRANDY XO)
言葉で語れないものを伝えたい時
私は手にグラスを持ってみる。
すると不思議なことに、私自身が表現になる。
(サントリー/サントリーオールド)
右手の苦労を、左手で忘れます。
(サントリー/サントリーオールド)
温かさを信じる。
(サントリー/サントリーホワイト)
「温かさ」と「信じる」。
どちらもありふれた言葉ですが、これらを組み合わせる発想がでるかどうか。
いままで使ってきた言葉を振り返り、グッとくる組み合わせを見つけたい。
そんな衝動に駆られる、スーパーホットなコピーです。
優しさを超えるものがあるとしたら、熱さだ。
(サントリー/サントリーホワイト)
とけ合えば、二人分の温かさ。
(サントリー/サントリーホワイト)
出逢った人より、別れた人の方が多かったような気がする。
(サントリー/サントリーリザーブ)
知識だけで、
味覚を磨くことはできない。
(サントリー/サントリーリザーブ)
100個の知識より、1回の体験。
いくら情報を集めても、得られないモノがある。
ましてや味覚を、五感を磨くなんてできない。
ウイスキーを知るには、ウイスキーを飲むのがいちばん。
青春は繰り返す。
(西武百貨店)
仕事に溺れるな。
(西武百貨店)
ラストシーンは美しく。
(西武百貨店)
理解できないのなら、黙っていてください。先生。
(西武百貨店)
胸、ふくらんできた。
(西武百貨店)
好きで、
いっしょで。
(丸井/赤いカードのクレジット)
カラダのいうことがいちばん正しい。
(資生堂/AUSLESE)
どれだけココロが活発でも、カラダがついてこないことがある。
年齢的にもそうですし、精神的にもそう。
カラダはいろんなサインを出してくれる。
老いだったり、病気だったり。
見逃さないように、ケアしていきましょう。
鋭角的なキブンである。
(資生堂/AUSLESE)
世の中、騒がしすぎる。
(三菱自動車/ギャランΣ)
節約とガマンは
違うと思う。
(硝子繊維協会/グラスウール断熱材)
人間 編
ぐっすり右門。
(国際羊毛事務局/ウール マーク)
「このボディコピーはスーパー名作である」
『新・名作コピー読本』という本で、5ページにわたり解説されているコピーです。
書き出し、スペックの表現化、Q&Aのリアリティ、読み言葉のエンタメ性、ボディコピーとスローガンの関係性、どれをとっても超一級品。
ぜひ実際に写経して、そのエッセンスを吸収していただきたいです。
ぼくもたくさん写経しましたし、これから何度も反芻します。
人間の体は、シンメトリーではない。
(国際羊毛事務局/ウール マーク)
繕の跡がちょっと気になる、日本人。
(国際羊毛事務局/ウール マーク)
汚れやすい色の似合うひと。
(国際羊毛事務局/ウール マーク)
とってもウールな人でした
(国際羊毛事務局/ウール マーク)
あなたは、人間らしくやっていますか。
(サントリー)
息子が酒を飲める歳になった時
なんといって語りかけたらいいのでしょうか。
(サントリー)
男はいつだって、
目を見開いたまま夢をみている。
(サントリー)
1981年のウイスキー広告のコピー。
ハードボイルド感がかっこよすぎます……
時代は変わって2021年。
40年経ったいま、どれだけの人が夢をみてるのか。
まだまだ大変な時期がつづきますが、ロマンを追い求め続けたいですね。
そうですね。僕は酔いたいんだよね。
酔わせたいし、酔いたい。
(サントリー/サントリーオールド)
音は俺だ。俺は音だ。
(フェルナンデス)
日曜日は男の腕前見せてやる。
(松下電器)
男には、見えない翼があるんだよ。
(西武百貨店)
女の時代。
(西武百貨店)
女は、ファッションを食べて育つ。
(西武百貨店)
体が私たちの一番美しい持ち物なんだ。
(西武百貨店)
いい女になるためには、
悪い女にも
ならなくちゃあね。
(マリークヮント コスメチックス ジャパン)
いまは女が醜くなれない時代だと思う
でもきっとそれは、
女にとって幸せなことよ。
(サントリー/サントリーオールド)
女と猫の間に違いがあるとしたら、
グラスを手にして笑うかどうかだ。
(サントリー/サントリーオールド)
商品-お酒 編
Blue Monday
White Night
(サントリー/サントリーホワイト)
「またつらい仕事がはじまるブルーな月曜日がやってくるけれど、その日の夜はホワイトが待っている」
憂鬱な月曜日を乗り切ったごほうびとして、商品を位置づける戦略ですね。
デザインもシンプルかつスマート。
商品を徹底的に理解したコピー。
青の日も、赤の日も、白
(サントリー/サントリーホワイト)
百人一酒
(サントリー/サントリーホワイト)
解放する男のゴールド
(サントリー/サントリーゴールド)
星の縁側。
(サントリー/サントリーリザーブ)
遍歴は、この一瓶で終る。
(サントリー/サントリーリザーブ)
春の砥石。
(サントリー/サントリーピュアモルトウイスキー山崎)
いい加減の加減。
(サントリー/サントリーピュアモルトウイスキー山崎)
ウイスキーは、聴くものである。
(サントリー/SUNTORY WHISKY「響」)
僕たちのビールは、これだ。
(サントリー/サントリービール純生)
ああ、トリス…文句なし。
(サントリー)
ああ、トリス一番人気。
(サントリー)
ああ、トリス一本勝負。
(サントリー)
ああ、トリス慕情。
(サントリー)
ああ、トリスのココロ。
(サントリー)
ああ、トリス一本立て。
(サントリー)
商品-ウール 編
触ってごらん、ウールだよ。
(国際羊毛事務局/ウール マーク)
ふわりと柔らかく、あたたかさが伝わってくるコピー。
触感や音、匂いなどシズルのあるコピーは、受け手にリアルな擬似体験を届けます。
ときには過去の思い出すらフラッシュバックさせる強烈なシロモノ。
だからシズルは、長く、強く心に残るメッセージになるんですね。
ウールの
15分間
入浴法
(国際羊毛事務局/ウール マーク)
肩の型。
(国際羊毛事務局/ウール マーク)
ペットはカーペット敵。
(国際羊毛事務局/ウール マーク)
さくさくさく、ぱちん。
(国際羊毛事務局/ウール マーク)
なんとシンプルで、心地いいシズルなんでしょう。
ウールの広告なのに、ハサミをでかでかと写しているだけ。
そしてコピーも、ハサミで切る音のみ。
「いいウールは弾力が違うから、切ったときの音も違うんだよ」
現場の人からそのような話を聞いて、これはいいなとそのままコピーにしたそうです。
へたに手で洗うより、洗濯機の方がいいみたい。
(国際羊毛事務局/ウール マーク)
ウールの60%近くは、空気なんだって。
空気を着れば、一番暖かいんだって。
(国際羊毛事務局/ウール マーク)
掃除機が悪いのかな。
カーペットが悪いのかな。
(国際羊毛事務局/ウール マーク)
商品-その他 編
北海道の人は、東京へ来ると
なぜすぐ風邪をひくんだろう。
(硝子繊維協会/グラスウール断熱材)
1975年、グラスウール断熱材の広告。
当時、北海道以外は、家の壁に断熱材が使われてなかったそうです。
だから東京に行くと寒くて風邪をひく。
その事実・疑問を、余計なテクニックなど使わずにコピーにしています。
窓よりも、
壁から熱が逃げている。
(硝子繊維協会/グラスウール断熱材)
この家建てる人、
この広告読んでるかな。
読まないと、ソンするな。
(硝子繊維協会/グラスウール断熱材)
近頃、秋がない。
(硝子繊維協会/グラスウール断熱材)
南にゆくほど、
断熱材は
厚くなる。
(硝子繊維協会/グラスウール断熱材)
断熱材のない家へ
買われてゆくエアコンはかわいそうだ。
(硝子繊維協会/グラスウール断熱材)
あなたの家は、閉め忘れた
冷蔵庫みたいなものだ。
(硝子繊維協会/グラスウール断熱材)
家が厚着をすれば、人間は
薄着になる。
(硝子繊維協会/グラスウール断熱材)
原子力発電所21ヶ所分の
でっかい節約。
(硝子繊維協会/グラスウール断熱材)
陽当りのいい家にこそ
断熱材を入れるべきなんだ。夜のために。
(硝子繊維協会/グラスウール断熱材)
687円の灯油を300円で買う方法。
(硝子繊維協会/グラスウール断熱材)
聴いてごらん。見えてくるから。
(パイオニア/WAVE)
1985年頃に発売された高級ミニコンポ『WAVE』のコピー。
「聴覚でしか見えない世界がある」というコンセプト。
そっと手招きしながら優しく誘うような表現。
コンセプトと表現のギャップに最高にしびれます。
何が見えてくるのか、想像するとワクワクしますね。
いま「静かなエアコン」でも
十年たったらうるさい、では困るのです。
(三菱重工)
車は、ファッションじゃない。
(三菱自動車/ギャランΛ)
シートの方が、あなたよりやさしい。
(三菱自動車工業/GALANT Λ)
いちばん自然なコスメティックは、光なのです。
(立川ブラインド/インテリアブラインド・シルキー)
ゴルフは、地球を相手にするスポーツだ。
(樫山/Lakeland)
僕の家は、僕に似ている。
(ニッセキハウス工業)
まとめ:体験することでコピーが変わる
いかがでしたでしょうか。
どのコピーも味わい深いものばかりで、深くここちよく酔ってしまいます。
そんな西村佳也さんが大切にしていることは「体験すること」だそうです。
広告の仕事は足を使ってネタを探すことが大事ですね。そこで直接の表現に繋がる発見がなかったとしても、ターゲットとコミュニケーションをしっかり取れていれば、大きな間違いを犯すことはなくなります。
——体験することでコピーが変わる より引用
実際に足を運んで体験すると、いろんな方面から思いもよらない情報やおもしろいネタが見つかるそうです。
知識より体験が、コピーを太く厚くしてくれるんですね。
たくさん体験することで、コピーライターとしても人間としても、どんどんレベルアップしていきましょう!
また、西村佳也さん自身もお酒を愛飲しており、サントリー山崎ではシリーズ広告を12年間ご担当されていました。
知識、教養、蘊蓄、洒落、そしてウイスキーへの愛と浪漫がこめられた作品集。
全134篇。読みモノとしても、勉強としても、味わい深い一冊です。