こんにちは、カイです。
この記事では秋山晶さんの名作キャッチコピーをご紹介します。
東京コピーライターズクラブの元会長でもある秋山晶さん。(2007年4月に仲畑貴志さんへ引き継ぎました。)
22歳でコピーライターになり、現在(2021年5月)に至るまで、現役でずっとコピーを作り続けています。
秋山晶さんもご自身のことを『”長い”コピーライター』と称し、「コピーライターは、停滞してはいけない」とコメントされています。
なかでもキユーピーとの関わりは歴史が深く、1966年から50年以上にわたり手がけているので、コピーの数が桁違いです。
ジャンルごとにまとめているので、気になるところからご覧ください。
地球 編
自然と、私と、野菜。
THANKS TO NATURE
(キユーピー)
野菜は自然が育んだ、大切な食物です。
太陽の光を浴びて、土の畑で育つ野菜は、
ヒトの生命の故郷である自然を感じさせます。
野菜に、自然に、感謝があふれるコピーです。
こちらにはCMや撮影秘話が載っています。
広々とした空と大地と、太陽に照らされる野菜たち。
見てるだけで、健康になれそうです。
植物が文明をつくった。
(キユーピー/キユーピーマヨネーズ)
地上だけが変わる。空は変わらない。
(キユーピー/キユーピーマヨネーズ)
地球のミネラルは野菜の中にある。
(キユーピー/キユーピーマヨネーズ)
生命は土に育まれる。
(キユーピー/キユーピーマヨネーズ)
時計は空にある。
(キユーピー/キユーピーマヨネーズ)
海は、もうひとつの畑なんだ。
(キユーピー/キユーピーマヨネーズ)
河も、また中国の畑なんだ。
(トウ・キユーピー/キユーピーマヨネーズ)
都会で最初に住んだ
場所は忘れられない。
(キユーピー/アメリカンマヨネーズ)
都市には
パッケージのない
食品が必要です。
(キユーピー/キユーピーマヨネーズ)
荒野にいたときより
シカゴにいたときの方が寂しかった
(パイオニア/ロンサムカーボーイ)
街よりも、彼は荒野で死にたかった。
(パイオニア/ロンサムカーボーイ)
120マイルを過ぎると、
エンジンの音だけでは寂しすぎる。
(パイオニア/ロンサムカーボーイ)
外国ではそこに住んでいる人のように
着るのが、スーツだ。
(メルボ紳士服)
その先の日本へ。
(JR東日本)
私の国のおいしさは、
まだ半分しか知られていない。
(サントリー/鏡月GREEN)
人生 編
時代なんか
パッと変わる。
(サントリー/サントリーリザーブ シルキー)
このコピーが掲載されたのは1985年。
秋山晶さんはこのコピーについて、「アナクロニズム(時代錯誤)だった」とコメントされています。
しかしその時代と比べると、現代は明らかに、すまさじいスピードでテクノロジーが進化しています。
2030年には自動車が空を飛び、2040年には宇宙旅行が当たり前になっているそうです。
これからも時代は、想像以上にパッと変わっていくことでしょう。
時は流れない。それは積み重なる。
(サントリー/サントリークレスト12年)
遠い日のような、今日。
(サントリー/ジャックダニエルズ)
夏はハタチで止まっている。
(サントリー/TROPICAL SUNTORY)
このコピー、本当は「夏は19で止まっている。」だったそうです。
最初はクライアントも喜んでいたらしいですが、後日、「お酒は二十歳をすぎたから、と言っているので、すみませんがハタチにさせてもらえませんか?」と要望を受けて修正。
こういうこともあるんだなぁと。
勉強になりますね。
すべては昔という言葉で片付けられる。
(キユーピー/アメリカンマヨネーズ)
多くの夢は、
かなえられた瞬間に失われる。
(キユーピー/アメリカンマヨネーズ)
過去はどこにも行かない。
(キユーピー/キユーピーマヨネーズ)
図工は2だった。
(キヤノンマーケティングジャパン/Canon MC)
メカニズムはロマンスだ。
(キヤノン販売/Canon AE-1)
…ing. 出来事には次がある。
(キヤノン販売/Canon AE-1)
精神力だけでは、
テープを切れない。
(大塚製薬/カロリーメイト)
必要なものは、地味に見える。
(大塚製薬/カロリーメイト)
こんな時、セキが出なければいいが。
(大塚製薬/コデックせきどめ)
丸くなるな、星になれ。
(サッポロビール/黒ラベル)
イメージしてごらん。
それが現実になる。
(東芝)
人間 編
人は食べたもので
できている。
(キユーピー)
筋肉、内臓、脳、細胞……
ヒトのすべては、食べたものでできています。
そこから動く力が、消化する機能が、考えるエネルギーが、そして生きるパワーができるんですね。
「次の100年に向けて、より一層お客様の食生活をサポートしていきたい」
そのような思いを込めて、キユーピーが出稿した広告です。
「考えてみれば、
人間も自然の
一部なのだ。」
(中島薫商店/キユーピーマヨネーズ)
需要は少ない。しかし、必要な人がいる。
(キユーピー)
誤解が、私を生んだ。
(キユーピー/キユーピーゼロノンコレステロール)
ママはまだ女性として美しいかしら。
(キユーピー/アメリカンマヨネーズ)
ママが現在の私より若かった頃。
(キユーピー/アメリカンマヨネーズ)
ただ一度のものが、
僕は好きだ。
(キヤノン販売/Canon AE-1)
このコピーが世に出てからもう何年も経っていますが、いまだに秋山さんは逡巡されているそうです。
「なぜ、“ただ一度のものが”なのだろう。“ただ一度のことが”ではないのか、“ただ一度のなにかが”ではないのか、あるいは、“ただ一度が”ではないのか。その答えは出ていない」
言葉ひとつとっても、考えの深さに驚きます。
遊撃手のように、僕は撮った。
(キヤノン販売/Canon AE-1)
花を見過ごしている人が、
花の写真を見てしみじみとする。
(キヤノン販売/花博写真美術館)
20歳までに、
僕はいくつ河を渡るだろうか。
(パイオニア/ランナウェイ)
父は本を持って家を出た。
僕はランナウェイと汽車に乗る。
(パイオニア/ランナウェイ)
24時間、900ml。
人は見えない汗を
流している。
(大塚製薬/ポカリスエット)
僕は誰にも似ていない。
(サントリー/サントリーリザーブ)
人は、人を思う。
(キリンラガービール)
私を、私たちにする。
(東京デジタルホン/J-PHONE)
私を笑え。
(フジテレビジョン)
ふつうの17歳なんか、
ひとりもいない。
(KDDI/au)
食事 編
野菜の色を食べる。
(キユーピー/キユーピーマヨネーズ)
野菜の色(=太陽が染めた色)の多くは、紫外線から身を守るためにできた抗酸化物質。
そして野菜の色は見た目だけでなく、人の身体にも役立つ力を含むそうです。
つまり、野菜は人間の味方。
そう教えられると、野菜を食べたくなりませんか?
こちらにはCMや撮影秘話が載っています。
レタスのアップに、淡々と語るナレーション。
ちょっと怖いですが、説得力ありありのCMです。
野菜は自衛する。
(キユーピー/キユーピーマヨネーズ)
イライラするのは、
生きた植物が、
足りないからかな。
(キユーピー/キユーピーマヨネーズ)
すべての生物は、食べるものでできている。
(キユーピー/キユーピーマヨネーズ)
料理を速くすると、夜が長くなる。
(キユーピー/キユーピーマヨネーズ)
サンドイッチを
「片手で食べるサラダ」と位置づける。
(キユーピー/キユーピーハーフ)
speed! 料理は高速へ
(キユーピー)
サラダ化現象
(キユーピー)
しあわせだと、食べすぎない。
(キユーピー)
愛は食卓にある。
(キユーピー)
アルカリ・ランチ
(中島薫商店/キユーピーマヨネーズ)
甘さを少なくするだけなら、
誰にでもできる。
(アヲハタ/55ジャム)
僕達の食堂は、
24h開いている。
(大塚製薬/カロリーメイト)
わたしたちの食堂は、
教室・バス停・空の下。
(大塚製薬/カロリーメイト)
商品 編
水よりも、
ヒトの身体に
近い水。
(大塚製薬/ポカリスエット)
どっちも水なんですけど、「ヒトの身体に近い」をつけることで、圧倒的なブランディングを施しています。
特徴と事実とロマンをギュッとつめ込んだ15文字。
しかも全年齢に届くことばです。
超絶にしびれます。
ぼくがいちばん最初に衝撃を受けたコピーです。
こちらはCMバージョン。
ナレーションはビートたけしさん。
語りかけるような渋い声が、ハイパーかっこいいです。
ノドをうるおす水と
身体をうるおす水がある。
(大塚製薬/ポカリスエット)
人間の欲しがる水と、
植物が欲しがる水は違う。
(大塚製薬/ポカリスエット)
花にも、
きっと好きな水がある。
(大塚製薬/ポカリスエット)
野菜を見ると、
想像するもの。
(キユーピー)
このコピーは、インタラクティブ(双方向のやりとり)を大事にして作ったそうです。
すると広告を見た人が、思い出を書いてくるほど反響があったとのこと。
「そのとき、広告ですべてを仕上げてしまい、完結させるのはやめようと思ったんです。」
一方通行に言葉を押しつけるだけじゃあ、響かない時代になったのかもしれませんね。
渇きを止めるだけではありません。
(大塚製薬/ポカリスエット)
都市とマヨネーズ
(キユーピー)
安全が商品になる時代が終わりますように。
(キユーピー)
このコピーを詳しく分析した記事があります。
なぜ、真っ白い紙に一行だけ書かれたコピーが「もつ」のか?
かなり論理的な分析で、勉強になりました。
興味のある方は、どうぞ。
フルーツは2度生まれる。
(アヲハタ/55ジャム)
フルーツには続きがある。
(アヲハタ/55ジャム)
うるさそうな女に会ったので
酒はジンにした。
(サントリー/ドライジン)
あまり話したくないので
酒はジンにした。
(サントリー/ドライジン)
セガは、倒れたままなのか?
(SEGA/ドリームキャスト)
11月X日 逆襲へ、Dreamcast
(SEGA/ドリームキャスト)
名前以外は、すべて新しい。
(TOYOTA/マークⅡ)
ホネケーキ以外はキレイに切れません
(資生堂/資生堂ホネケーキ)
比叡山に、やがて月桂冠になる雨が降る。
(月桂冠)
男は黙って
サッポロビール
(サッポロビール)
まとめ:コピーは結局「ぱっと見」
いかがでしたでしょうか。
ここまで80本の名コピーを見てきました。
秋山晶さんはコピーを作るうえで、「ぱっと見」を大切にしているのだそうです。
コピーは結局「ぱっと見」なんですよ。「ぱっと見」がいいのは最初に書ける。あとは親切なコピーになっちゃう。助詞が入っているとか、“てにをは”が入っているとか。その“親切”が、コピーにとっては一番ネガティブなことなんですね。
——コピーは「ぱっと見」が何よりも大切 より引用
たしかに秋山晶さんのコピーは、「ぱっと見」て伝わってくるものが多い気がします。
それでいて、その時代の要点や、ハードボイルド的なロマンが詰め込まれているように感じました。
ネット広告が主流になった現代では、「興味がない」と思われたら、0.1秒くらいですぐ飛ばされますよね。
「ぱっと見」勝負で負けないようためにも、先人たちのコピーを見て勉強し、知識を蓄えて、スキルを磨いていきましょう!
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