こんにちは、カイです。
この記事では『コピー年鑑2007』から選出したマイベストコピーを10本ご紹介します。
というのも、コピーライターである黒澤晃さんの著書『これから、絶対、コピーライター』には、このようなことが書かれています。
さて、いちばん始めにやっていただくのは、コピーの名作を知ることです。ずばり、おすすめはTCCコピー年鑑の閲覧です。
(中略)
大切なのは、ただ閲覧するだけではなく「マイベスト10」を選んで、書き写しておくことです。
(中略)
とても重要なファーストステップですので、省かずにやっていただきたいと思います。あとの成長が本当に違ってきます。
——『これから、絶対、コピーライター』より引用
前回は『コピー年鑑2006』でやってみました。
コピーの勉強になるのはもちろんですが、懐かしいTVCMやポスターもあってノスタルジーに浸る時間でもありましたね。
そして今回は『コピー年鑑2007』で実施。調べたら総合図書館に過去の年鑑がずらりとあったので、片道1時間かけて行って、6時間くらいで読破しました。
マイベスト10を選び、アウトプットも兼ねて記事にしましたので、興味のあるところからご覧いただけると嬉しいです。
目次
01:最初に自動車が、100年後にパソコンが、ヒトを動かない生物にした。
2000年代から日本でインターネットが台頭しはじめ、2007年にはすでにアパートから一歩も出ずに仕事をする人が増えていたそうです。
それを知って秋山晶さんは、自然不足・ミドリ不足の深刻化を懸念したのでしょう。
過去の事例と未来の予想を混在させて警鐘を鳴らす、そんな高度なキャッチコピーだと思いました。
そしてボディコピーではしっかりと野菜の訴求に持っていくその構成力にも敬服です。
実際に16年後の現代ではテレワークも進み、ますますヒトは自然から離れているように感じます。
02:日曜日の夕方からは、もう月曜日だ。
日曜日の
夕方からは、
もう月曜日だ。
(楽天トラベル/玉山貴康)
2年半も休みなく毎日連載していた朝日新聞の突き出し広告シリーズ。その数なんと900本以上。
日常の視点をはじめ、GW・夏休み・年末年始などの休暇視点、部屋・食事・温泉などの旅行視点、恋愛、トレンド、etc……
ふだんからいろんな視点でモノゴトを見て、テーマを拾い上げ、コピーとして書き上げてきたそうです。
その中でも冒頭のコピーは、多くの人が「そうそう!」と強く共感してしまうのではないでしょうか。
視点からコピーの型までたくさん学べますね。
この広告シリーズは、鈴木康之さんの著書『名作コピーに学ぶ読ませる文章の書き方』でも解説されています。プロのアドバイス・トレーニング方法を教えてもらえるので、とても勉強になりますよ。
03:知名度だけが一流の会社で働くより、知名度だけが二流の会社で働きたい。
知名度だけが一流の会社で働くより、
知名度だけが二流の会社で働きたい。
(リクルート/富田安則)
違うワードは『一流・二流』だけなのに、意味と印象が180度ひっくりかえるコピー。
ここまで鮮やかに”対句”がキマっているコピーとは、出会ったことがありませんでした。
テクニックが目立つコピーや、コピーっぽいコピーは嫌われがちですが、ここまでナチュラルにバシッとはまると爽快ですね。
ちゃんとターゲットのインサイトも表現しているので、共感性も高いです。
求職者のことをたくさん想像したんだろうなぁと。
デザインもキャッチコピーだけの真向訴求。しびれます。
04:生で食べると、生きものをいただいていることが、よくわかる。
このボディコピーは「お酢→お寿司→生→生きもの」という逆算で組み立てたと思います。
そこでまずは、読み手に馴染みのあるお寿司の価値を高めるような書き出しからスタート。
そして生のすばらしさ、生きものをいただくことを温かく伝えて、最後に商品・クライアントへと落としていく。
「言うまでもありません」という締めの表現も、より一層うれしさを際立たせていて、ひと工夫されているなぁと。
本当に岩崎俊一さんのボディコピーはお手本ですね。大好きです。
05:どんな敵にも、弱点があります。親切にされること。
どんな敵にも、弱点があります。
親切にされること。
(明治製菓/山田尚武)
フィクションかノンフィクションかは定かではないですが、おそらくベルリンの壁をモチーフにしてる物語だと思います。
ゴミやガラクタを投げる東の人々に対し、パンやジーンズ、そしてチョコレートをお届けした西の人々。
キャッチコピーもそうですが、「何を与えたかが、その人の価値だよ」という言葉に胸を打たれます。もはや人生訓ですね。
チョコレートを積んで壁に見立てるアイデアも素敵だなぁと。
ストーリー系ボディコピーの中でも、とても大好きなシリーズです。
06:春と夏の間に、いったいいくつ季節を隠しているんだ、この町は。
春と夏の間に、いったい
いくつ季節を隠しているんだ、
この町は。
(東海旅客鉄道/太田恵美)
季節といえばもちろん春夏秋冬。
その常識をさらに細分化し、季節と季節の間にも季節があるんだと発見しているコピーですね。
言われてみればたしかに、日本には四季だけではおさまらないもっと豊かな季節があるなぁと。
そしてこのコピーはおそらく、太田恵美さんが実際に現地に足を運んで実感したコピーだと思います。
だからこそセリフ調でリアリテイのある表現にしているのではないかと。
現地で体験しないと出せないコピーがあるんだと、改めて教えられました。
シーズンをあえて外して行きたくなる、人を動かすコピーですね。
07:飛行機雲は、灯油製。
飛行機雲は、
灯油製。
(石油連盟/澁江俊一)
「えっ、そうなんだ!」と素直に驚いてしまったコピーです。
ふだんからよく見る飛行機雲の正体が灯油だったなんて。
その事実と驚きがキャッチコピーとして強い力を発揮しています。
やはり日常化しているモノの応用・新発見は人の興味を惹きつけるなぁと。
だからこそ訴求したいテーマをいろんな角度で調査して、いろんな視点で見て、いろんな仮説や考えを持つことが大切ですね。
飛行機雲を見るたびに、このコピーを思い出すと思います。記憶に残るコピーは強い。
08:よその社長は、いいこと言うなぁ。
よその社長は、
いいこと言うなぁ。
(テレビ東京/岡安徹)
国内の経済界で活躍している社長や著名人にスポットを当てたトークショー番組『カンブリア宮殿』。
役立つ情報と勇気をもらえるメッセージを届けてくれるので、キャリア志向の強いビジネスパーソンから多くの支持を集めていました。
そんなビジネスパーソンのインサイトを代弁したら、たしかにこのコピーになるなぁと。
こういうインサイトは変にいじらずに、ひっかかりなく共感できるように、ストレートに書き出すことが大切ですね。
味のあるイラストとも相まってクスッと笑ってしまいます。
自分も好きな番組で、毎回刺激をもらってました。
09:いい気分になります。
いい気分になります。
(美食酒屋 ちゃんと。/石田百合子)
「コピー作るときは『!』を与えるように。これが大きければ大きいほどいい」
宣伝会議のコピーライター養成講座に通っていたとき、ある先生が教えてくれた言葉です。
このCMはその『!』がめちゃくちゃに大きいなぁと。
えげつなく不幸な状況なのに、明るくノリ良く話を進めるそのギャップが『!』ですね。
「いい気分になれる美味しい居酒屋」→「不幸MAXでもいい気分になれる美味しい居酒屋」という付け足しがプロの技だなぁと。
あと阿部サダヲさんの演技が最高です。
審査員コメントでは「このあと彼が自殺しないか心配です」って書いてました。
コピー年鑑で字コンテを読んだだけですごく笑えましたし、映像がものすごく見たいと思いました。
10:ちょっといい、はすっごくいいのはじまりです。
ちょっといい、は
すっごくいいの
はじまりです。
(ヒガシマル醤油/皇甫相太)
訴求する商品が『ちょっとどんぶり』だから、その「ちょっと」という単語にまずはフォーカス。
そこから恋愛に視点を広げて、恋の始まりを想像して、このコピーを見つけたんだろうなぁと。
台所での生活感あるシチュエーションも身近に感じて、疑似体験できて胸キュン。
このコピーを読んだ後、思い当たる人を考えた人も少なくないのでは。
「たしかに」って納得できる、ドキドキを与えるコピーですね。
女性のちょっと愚痴るような最初のセリフが、よりギャップを生み出していて効果的だなぁと。
まとめ:なんだか励まされました
いかがでしたでしょうか。
今回で3回目なので、マイベストコピー選出がすこしだけスムーズになったような気がします。
それでもやっぱりコピーをひとつひとつ読むのは気力が要りますし、その倍は楽しくて充実した時間をすごせました。
まだまだ知らない言葉や視点がたくさんあります。温故知新ですね。
それに受賞者や審査員の方々のコメントを読むのもすごく勉強になりますし、なんだか励まされました。
また総合図書館に行って、ほかのコピー年鑑でもマイベストコピー10を選んでみたいと思います!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
ぜひあなたも、あなた自身のベストコピー10を選んでみてください。